生まれ持った女という性別・身体のままで自由を手にしたい、”人間”になりたかったんだ

ミソジニーとは何か?

上野千鶴子氏の言葉を引用するならば、

ミソジニーとは

男にとっては「女性蔑視」、女にとっては「自己嫌悪」

だという。

わかる。非常に理解できる。私が、日常の風景に当たり前のように自然に蔓延しているミソジニーに気づいたとき、もっとも苦しかったのは、自分自身の中にもミソジニーを内面化しているという事実を突きつけられたことだ。

いやあ、この本すごかった。

(私が読んだのは単行本の紀伊國屋書店版で、文庫版には追加があるようだ?)

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膨大な文献を引用しながら、あらゆる角度からミソジニーとはいかなるものかということをひもといていく。分析していく。

女であること、女であることによって被った不利益の数々、女であることの自己嫌悪・・怒りや悲しみといった感情から少し距離を置いて、もっと淡々と具体的に、深く深く「なぜ、そうなのか?」ということを、過去の歴史や事件や文献から徹底的に読み解こうとするのが本書だ。

キーワードは、「近代」だと個人的には感じた。そう、近代以前のミソジニーは、現代のそれとちょっと異なるもののようだ。

今現在、私が苦しいと感じるのは、主に「近代」以降に深まったミソジニーのように思えるんだ。例えば、現在のような結婚制度、家族のかたち、セクシュアリティの定義などだ。

個人的に興味深かったのは、東電OL殺人事件のミソジニーの頁だ。センセーショナルな事件として記憶にあったものの、私自身、この事件の詳細については無知だった。被害者のA子さんが自分の身体を非常に安い値段(時には1回5000円など)で売ることで、A子さん側が男に値段をつけていたんだという発想の転換には目が覚める思いがした。

(A子さんは東電の総合職エリート女性社員で、年収1000万ほどあったといい、決してお金に困って身体を売っていたわけではない。では、なぜ?という問いに、上野氏はひとつの答えを導きだす)

(以前読んだ真梨幸子の小説で、この事件と似通った設定があったが・・この事件からインスピレーションを得たものだったのかな?)

また、本書全体を通して、ホモソーシャル(今ではホモソと略されることが多い・・)について、何度も何度も言及されているが、非常にわかりやすかった。

走り回ってちょっと無茶して冒険しているような男の子の傍らで、「もう、男子ってしょうがないわねえ」っていう女の子、やんちゃな男子を優しい目で見守ってくれるような大人びた女子みたいな存在って、現実でもあるし、度々フィクションにも登場してくる。

私は、子供の頃から、男子ってしょうがないわね、って優しく笑っている女の子なんかになりたくなかった。私は、自由にどこまでも走り回って紙飛行機を追いかけるような男子になりたかった。

女はなんで走り回れない?冒険できない?優しく微笑んで男子を見守らなけりゃならない?

高校野球で全力投球する男子たちの影で、かいがいしく彼らの世話をし勝利を祈る女子マネージャーなんかになりたくなかった。

いつでも未来の選択肢は男子に限りなくひらかれていて、女子には限界(制限)があった。

私は、男性になりたいわけではなかった。今ならあの頃、自分が欲していたものがよくわかる。男でいるだけで自動的に手に入れられる自由がほしかった。それは女性にはいくら望んでも手に入らないものだ。

思春期に、自分が女であることを素直に受け入れられなかった私は、ジェンダーに関心を持ち、レズビアンやゲイ、性別変更や両性具有の体験記などをかなり読んだ。

当時は、今のようにLGBTQといった言葉もなく、ネットでさまざまな情報に触れることも難しかった。図書館などで本を探して読むことで、自分の正体不明の感情の答えを探すしかなかった。

20代で一人暮らしをしながら働くようになってからは、日々の慌ただしい生活の中で別の悩みなどが大きくなっていったこともあって、ジェンダーへの関心は次第に薄らいでいった。

今振り返ると、思春期のあの感情は、性別違和というのとは違ったんだなとわかる。あの頃、なぜ(ラディカル)フェミニズムに辿り着けなかったのか・・、ちょっと悔やむ。

私は、生まれ持った女という性別・女の身体のままで、男と同じように自由を手にしたい。”人間”になりたかったんだって今ならわかる。

ホモソーシャルという概念は、上野氏いわく「性的であることを抑圧した男同士の絆」だ。男は男によって承認される。女は男を男にするための手段、道具でしかない。男が男に認められるためには、女を所有せねばならない。
女の承認にはいつでも男が介入してくるが、男の承認に女はいらない。男は男のみで承認しあい、男たちの集団に同一化することによって男になる。

フェミニズムを知るには、絶対にはずせない1冊だと思う。これを読む前と読んだ後では、あらゆる言動、出来事、日常の風景の解釈がかわってくるだろう。

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「女ぎらい」は、一行一行理解しようとしながら読み進めていくため、1冊読み終えるのにそこそこ時間がかかってしまったが、こちら↓は対談で非常に読みやすかった。また別の視点から、考えることが多かった(ちょっと違和感がある部分もなくはなかったが・・)

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ラディカルフェミニズムに辿り着いてから、日常の景色の見え方が変わった。

正直苦しいことの連続だが、なんかこう、命題に出会ったような、そんな気もしていて、苦しいながらも考え続けたいって思う。

フェミニズム

Posted by しがらみん