独身・中年・非正規女性は努力不足の結果か?【『なってはいけない見本』呼ばわりに疑問】
情報収集のために、ネットでいろいろ調べていたりすると、差別的な文言や、決めつけや断罪に出会うことがある。
たとえば、「中年の独身・非正規女性にならないために、今を努力せよ」みたいな若い学生へ向けたメッセージなどだ。
つまり、現在、独身・中年で非正規の女性は、努力不足だからそうなった、若い君らは彼女らと同じ轍を踏まないように、未来を見据えて稼げる仕事に就けるよう努力せよ、ということらしいんだ。
どうしようもなく複雑な気持ちに包まれる。
はて、私は、41歳の中年独身非正規女性である。それは努力不足だったからなのだろうか?
私は、超就職氷河期世代だ。就職活動は大変に苦戦した。採用人数が極端に少なかったり、正社員は募集せず契約社員のみ、それどころか新卒の採用自体がないといったこともザラだった。
そういった過酷で厳しい就職活動の中で、女であるということは、さらに不利だった。そうだ、女に生まれるということは、生まれた瞬間からハンデを負っているということだ。
そのことを、中年になった今も、痛いほど感じ続けている。
それは長い長い歴史の中で蔓延ってきた女性蔑視、男尊女卑の思想が、未だ潜在的に無意識に我々を支配しているからだ。
その弊害は、社会のあらゆる場面に遍在している。女であることは、女を苦しめ不自由にさせる。きっと女という性別でこれまで差別や搾取を感じたことのない人はいないだろう。もし、感じたことがないという女性がいるとするならば、それは、気づかないフリをしているだけだ。気づかないほうが好都合だから見ないフリをしているだけで、いまこの瞬間も、搾取は差別は当たり前のようにおこなわれている。
果たして、現在、独身で非正規で低収入である中年女性たちは、努力不足だったからなのだろうか?
少なくとも、私の場合は、途中で道(選択)を間違えたかもしれないと思う一方で、今日に至るまでの日々で、努力を怠ったとは思っていない。
役に立たないことや無駄なことばかりに注いだ大学時代や20代・30代だったかもしれないが、努力の方向性を間違えていたかもしれないが、そんな私のこれまでの日々を、お金を稼げるか稼げないかのみで判断し、無駄で無意味だったなんて、私は絶対言いたくないんだ。
私は、その都度、私なりの最大限のベストを尽くしてきたつもりだし、将来稼げる仕事に繋がらなかったとしても、試行錯誤しながら、その時その時の最適を探して、自分のできることに真摯に向き合ってきたつもりだ。
だから、結果、中年の現在、結婚もしておらず、仕事も派遣の非正規で、実家に戻って暮らしている、そんなスペックだけを抜き取って、努力不足と断罪されて、なってはいけない見本のように扱われることに、悲しさがある。
一口に、独身、中年女性、非正規といっても、人それぞれストーリーがあり、その誰もが、それぞれの日々の中でその人なりのベストを尽くしてきたはずなんだ。
例えば、自身の病気や親の介護など、その他様々な要因によって、望んだ道を選択できなかった人たちだってたくさんいる。
わかりやすい属性のみを取り上げて、努力不足だったと断罪し、なってはいけない見本のように、あげつらう世の中ってなんなんだろう?
そもそも、「女は家庭に入って夫の扶養で暮らすもの、女の労働は家計の足しだから低賃金で構わない」といった時代錯誤の思想を引きずったまま、女性労働者を低賃金で使い捨て続けた、その結果が今だろう?
それを、非正規中年独身女性の努力不足が原因だったかのように、すり替えて、物事の本質をぼやかそうとする。
そして、中年独身女性の当事者ですら、「私の努力が足りなかった。私の能力が低かった」と思い込まされるんだ。社会からの絶え間ない断罪に、思考までもコントロールされるんだ。
なんだか、今のネットの世界には、断罪とか自己責任論とかがあまりに溢れすぎていて、そういった言葉を目にするたびに、擦り切れそうだ。
声をあげることは大事だ。声をあげないと、何も変わっていかない。だから、女性の貧困の背景には、本人の努力不足とはまた別で、社会の構造自体(女性の労働力を安く買い叩いてきたという)に問題があるというところを認識して、制度を変えていく必要があると思う。
女が男と同じ土俵に立つためには、いくつもの見えないハードルを超えて超えて、ようやく叶う。もちろん、優秀で圧倒的な努力を重ねた女性でそこに立っている人たちはたくさんいる。でも、そうなれなかった女性たちを指して努力不足と断罪するのは、あまりに短絡的すぎやしないか。
そんなことを思う一方で、なんだか疲れてきてしまうんだ。そういった言葉を目にするたびに、自尊心が削られていくし、ただただ美しいもの、好きなもの、心動かされるもの、それだけを見てその世界に没頭していたいと、思ってしまったりするんだ。
辛いんだよ。そういった言葉を、誰かが吐いているという現実が・・。
もう目にしたくないし、これまで散々傷ついてきて、さらに傷つきたくないんだよ。