「独身です」と答えると、なぜか謝ってくる人
これまでさまざまな職場を漂流してきたが、新しい職場に行くたびによく聞かれる質問として、
「結婚してますか?」ってのがある。
職場によって、まったく聞かれない場合もあったが、何の前触れもなく唐突に直球で「結婚してるの?」とか「結婚してますか?」とか聞かれることもけっこうあった。
私自身は他者と会話するとき、相手に結婚しているか問うことはない。会話の中で、配偶者や子供の話が出てきたら、「ああ、この人は既婚者なんだな」とか「お子さんがいるんだな」と理解する程度だ。自ら進んで独身だということを伝えたりもしない。
だから、不躾に唐突にストレートに聞いてこられると、内心「お、おう・・」と思いつつ、「結婚してないです」「独身です」などと答える。
それで、私の「独身です」「結婚してないです」の返答に対する反応として、大きく分けて2つのケースがある。
1、「そうなんですね」とか「そうなんだー」とかで終わる場合
2、「失礼しました」「すみません」「ごめんね」等、なぜか謝られる場合
私がけっこうモヤモヤするのは、2のケースだ。なぜか「独身」「結婚してない」と答えると、謝ってこられる場合だ。
これ、独身の人なら少なからず経験あるんじゃないかな?
相手が独身だと知ると謝ってくる人の心理
私としては、結婚願望がある(あった)わけでもなく、なるべくして自然に独身なので、別に謝られるようなことではないのだけど、なぜか相手は謝ってくる。
なんで謝ってくるのだろう?
それって、たぶん私の問題ではなくて、謝ってくる人の問題だ。
独身だと知ると謝ってくる人は、たぶん「結婚していることが当たり前」だという考えが根底にあるんじゃないかな?
だから、相手が独身だとわかると、「当たり前からはずれた人」だと認識して、失礼なことを言ってしまった!と感じて、「すみません」とか「失礼しました」という謝罪の言葉が思わず出てしまうのではないかな?
もし、「今の時代、人によって既婚や独身など様々だ」という感覚が前提にある人なら、まず謝ってきたりはしない。自然に「そうなんですね」ってサラッと会話は終わると思う(というか、そういう感覚の持ち主なら、そもそも唐突に結婚しているか尋ねてこないような気がする・・)
相手が独身だと知ると謝ってくる人ってのは、心のどこかで独身者を低くみていて、普通じゃない人、とでも思っているのかもしれない。だから、謝るんだろうな。
逆に考えてみるとよくわかる。「結婚してますか?」の質問に「結婚してます」と答えが返ってきたら、謝る人はまずいない。
つまり、結婚=正しいこと(普通のこと)、結婚してない=間違ったこと(普通じゃないこと)という認識がたぶんあるのだろう。
独身だからといって、謝られる理由はひとつもない
別に独身だからといって謝られる理由なんて何ひとつないのに、謝られてしまう。
そういうとき少しモヤモヤとして、それから、相手の思想とか感覚とか偏見を垣間みることができるんだ。そうか、この人は「独身=異質なもの、間違った有様」という認識なんだな、と。そして、おそらく既婚者であることに優越感を抱いているようだ。
結婚しているかどうか自ら話題を振り、その答えによって謝りを入れる。失礼で無神経な人間であることは間違いない。
こういった相手とはなるべく関わらないよう適度に距離をとり、仕事上は当たり障りなく接するように心掛けている。
悪気なく、深い意味はなく、口をついてなんとなく「失礼しました」「すみません!」「ごめんね」という言葉が出てしまったのだとして、やっぱりそういう人って無意識に「世間の普通と違う他者」を低くみているように感じる。
そんな人間とは、なるべく関わらないことだ。
謝るってことは、独身が「悪いこと・触れてはいけないこと」だと思っているからだ。さっきも書いたように、逆に「結婚してます」という返答に対して、「悪いことを聞いてしまったな」だなんて謝る人なんていないだろう?
独身者の日々の充実、幸福は語ってはいけない
独身であることは、まだまだマイノリティで生きづらい側面が多いとは感じる。一昔前よりはマシになったとは思うけど、やはり独身であるというだけで、「おかしな人」「かわいそう」「不幸」「みじめ」といったネガティブなレッテルをはられがちだ。社会制度の中でも独身女性は取りこぼされがちだ。
とはいえ、私自身は、独身で過ごす今の自分がわりと嫌いじゃない。そこそこ悪くない日々を送っていると実感している。
40代後半に突入して、過去抱いてきた独身であることの後ろめたさ、マジョリティになれなかった生きづらさがどんどん薄らいでいっている。
私の場合は、「結婚したい・したかった」というよりは、マジョリティになれない自分の不全感に悩んできた部分が大きかったように思う。
40代後半の現在、なかなか悪くない独身の日々を過ごしているが、それは絶対にリアルで誰かに語らない。そぶりだってみせないよう心掛けている。
既婚者の中には、独身者に妬まれないように「結婚なんてしなけりゃよかった」だなんて心にもないことを表面上では語っている人もいるらしい。
お互い様だ。
お互い、本音は隠しておくのが賢明だ。
「独身です」「結婚してないです」と答えたら謝られてしまうと、やっぱりちょっとモヤモヤするけど、こういう相手とは何を話したって無駄だから、対話をする必要はない。
骨折り損のくたびれもうけ。
表面上は穏便に会話を進めつつ、相手に理解してもらおうと努力する必要はない。だって、相手は私のことを理解したいだなんて最初から思っていないのだから。自分と違うマイノリティな誰かを貶めて、否定し続けたいだけなのだから。






















