あなたを探してる・木村千穂『中庭の少女』

2018年5月3日

木村千穂、という画家をご存知だろうか?

20年ほど前だったろうか、NHKのドキュメンタリーで特集され、当時その番組を偶然視聴していた私は、強烈な印象とともに、木村千穂、というひとの名前を心に刻んだ。

拒食症、過食症、ひきこもり、アルコール依存症・・
病と対峙しながら、ひたすら描き続けるその姿が心に残った。
そして、その絵がすばらしいなと思った。おどろおどろしくもありながら、透明で美しく、狂気に満ちていながら静謐であり、目が離せない、そんな種類の絵だった。

やがて、苦しみの理由は、母の支配、ということにたどり着く。今でこそ、毒親という言葉が社会現象となり定着したが、当時はまだそこまでの認識はなかったように思う。

当時、この本を購入し、読んだ。画文集とあるように、絵とともに文章があるのだが、それがまた心を揺さぶる。
今も私の本棚に並んでいる。また、ポストカードを中野のタコシェで購入し、額に入れて飾ったりしていた。

迷っている自分にしか描けない線があり、その時にしか出せない色がある

彼女は本書の中でそのように語っている。苦しみから解き放たれて、光射すほうへと向かっていくような言葉の数々に、救われる気がした。

あれから20年。現在はどうされているのだろうか。特に制作活動しているような様子はなく、近況はわからずじまいだ。時折思い出す。木村千穂さんの狂ったような酩酊したような美しい絵を。少女時代の痛みが蘇ってくるような言葉の数々を。

私より10歳ほど年上であるから、現在50歳くらいだと思われる。今のあなたの絵と言葉を知りたいと思う。

ふとした瞬間に、蘇ってくる、心を掴んで離さない。あなたのような苦しみを心に抱えながら生きているひとたちは多いと思う。きっと、私と同じように、今でも木村千穂さんのことを思い出すひとたちは、いるのじゃないかな。

ふと本棚に目を向けたとき、『中庭の少女』の背表紙が飛び込んできて、私の心を揺さぶる。現在の彼女が幸せでいてほしいなと、強く思う。

考える日々

Posted by しがらみん